就職活動の時期が再検討されるという話があるそうです。
就活:日程、再見直しへ 経団連会長「4月選考も選択肢」(毎日新聞)
以前の記事で、8月スタートのはずの就職活動が、いざ蓋を開けてみれば多くの学生がすでに内定を得ており、注意のみで実際には何の罰則のない今回の方法は見事に失敗だったと言わざるを得ないでしょう。それを信じていた学生も一定数いるでしょうし(そうした学生を情弱と一笑に付すのは簡単ですが)、再検討も何も、今の就職活動はそもそもシステムとして成立していない、ルールの明示されていない、暗黙のルールだけでプレーヤー(学生)が動かされている極めて微妙なゲームのようです。
さて、記事を読んでみると、見出しにもある通り、4月選考を復活させるということのようですが、8月選考開始の提案さえ、実際には守らない企業がごまんといたわけで、選択肢なんて上から目線の表現を使っていますが、現実として「企業の選考活動をコントロールしきれない」ということが露呈された印象は否めません。
そもそも論が許されるならば、この日本の「新卒至上主義」が問題の根本にあります。これを解決しない限り、選考時期をずらすような小手先の変化だけでは就活というマーケットは中途半端な規制をかけられたまま、これからの社会をうまく引き継いでいくことは難しくなっていくと思います。
少し前に読んだ平川克美さんの『路地裏の資本主義』や渡辺格さんの『田舎のパン屋が見つけた「腐る」経済』などでも書かれていたことですが、資本主義のシステムとして「拡大路線」というのはどうにも変更の仕様がありません。でも実際問題として「少子化」は進んでいるわけで、どうあがいても一つの企業が採用できる新卒の数は減らさざるを得ません。でも、企業としての成長・拡大路線は捨てきれませんから、そうなれば新卒以外の人材を手に入れなくてはいけないはずです。そうなれば新卒至上主義などというものは維持できるはずもなく、遅かれ早かれ学生の就活市場は規模の縮小と価値の低下が避けられなくなるでしょう。今は「希少なパイ争い」みたいな雰囲気があり、また、「オワハラ」なんて問題も(これは今更になってネーミングされただけですが)生じていますが、この沈みかかった船のような状況を脱する一手を打ってくれる企業は未だに現れていません。
就活の時期が何度見直されても、学生の学生としてのスケジュールは変わりませんし、そうコロコロ変えられると大学の側としてもいちいちその対応に困るでしょう。誰も得をしない就活時期の見直し問題こそ、学生が立ち上がってデモでも何でもやるべきなような気がするのは私だけでしょうか。