地元以外の学校へ進学し、地元で就職先を探す。いわゆるUターン就職と呼ばれるものだが、これを志望する若者というのは意外と多いらしい。大手新卒求人サイト・マイナビが実施した「2014年卒 マイナビ大学生 Uターン・地元就職に関する調査」という興味深いアンケートもある。就活生は社会全体の経済状況による影響を多少は受けながらも、基本的にはいつの時代も大企業志向が大多数だ。それは手がける仕事や事業の規模、給与や福利厚生など、考慮すべき部分でベターを求めれば必然的にそうなるのであって、実は大したことではない。ただ、近年になって、NPOが注目されたり、社会貢献といったキーワードが出てきたことで、進路の選択肢に変化が起きているのは間違いないだろう。今回は、「Uターン就職」について少し話してみたいと思う。

 

まず基本的に、「就職して仕事をする」パターンは大きく3つに分けられると思う。1つ目はお金重視の場合。やり甲斐やマッチングといった部分を大して気にせず、「仕事はお金を得るための手段」と割り切って働くパターンである。2つ目は、1つ目と正反対にやり甲斐を重視する場合だ。給料が低かろうが労働条件が恵まれていなかろうが、「自分が好きなことで食っていく」という仕事=自己実現の手段という考え方である。そして3つ目は―これが一番多いのだろうが、1つ目と2つ目のハーフ&ハーフのような場合。給料や福利厚生も気にしつつ、自分に向いている仕事をするというものだ。

 

先のアンケートを見てみると、地元就職を希望しない男子の回答として「志望する企業がない」という理由が多いようだが、これは仕事に一定以上のやり甲斐を求めているということなのだろう。こういう回答を見ると、上の世代から「そんなものを求めている時点で甘えてる」と怒られてしまいそうだが、生まれた瞬間から身の回りはモノで満たされており、生活に大した不自由を感じなくなっている以上、社会人になって最も多くの時間を費やすことになる仕事にやり甲斐のような精神的充足を求めてしまうのは、ある意味で当然の流れだとも言える。

 

その一方、女子の回答で興味深いのは、実家をキーとした「両親や祖父母の近くで暮らしたいから地元就職を希望する」「親元を離れたいから地元就職を希望しない」というものだ。業種などよりも場所を気にするというのは、結婚なども含めた公私の私、つまりプライベートな部分を重視したいという思いの表れなのかもしれない。先の3パターンに当てはめれば1つ目の「仕事はお金を得るための手段」派だということになるだろう。仕事で貰ったお金を、自分の好きなことをしたり、親友と遊ぶためのプライベートな時間に投じることで精神的な充足を得るということなのだろう。最終的な結論としては先ほどの男子の場合と同じく「精神的な充足」に行き着くことになったのは不思議なものだ。

 

少し話を変えよう。これは個人的な予感だが、地方というのは、新しいベンチャー企業のような存在になっていくと私は思っている。ベンチャーと言えば少し前のITベンチャーブームが記憶に新しいが、あの時はスピード感があり過ぎて、結果的に多くの人たちがよくわからないままバブルが弾けてしまい、何となくITという言葉が悪名だけを馳せてほとんど跡形も無くなってしまった印象が強い。あれはあれで夢を叶えることができた人もいただろうし、日本のネット企業の土台を築く機会にもなったと思うが、近年、改めて注目を浴びている地方こそが、新たなベンチャーとしての可能性を秘めていると私は思うのだ。

 

「地方活性化」「まちおこし」など、耳ざわりの良い言葉が並んだことでいささか食傷気味になってこそいるが、地道に活動を続けて着実に前進している地方自治体や企業・団体も存在している。大量生産・大量消費社会が飽和状態となり、改めて「ものづくり」に熱い視線が注がれているのも似たようなものだが、要するに都市では圧縮され続けている時間と余裕と土地がまだまだ地方には残っているのだ。ネット時代となった現代、物理的な距離など仕事においてはどうにでもなるものとなりつつあるし、地方発の面白い試みもどんどん始まっている。動き始めている今の地方に圧倒的に足りないのは、まさにネット技術が標準装備された若い人材である。肝心の地方の企業や団体がそこに気付いていないために、本腰を入れて若者を求めようとしていない姿勢が少し気に掛かるが、今後、新たな存在意義を担う「ベンチャー地方」が登場・成長するためにも、Uターン就職者の数はもっと増えていくべきだし、増えていかなければならないだろう。