「オワハラ」という言葉をご存知でしょうか。

セクハラという言葉が日本に登場して以降、様々な行為が「ハラスメント=嫌がらせ」ということで「◯◯ハラ」と名付けられてきました。私が個人的に知っている、あるいは名前ぐらいは聞いたことがあるハラスメントを挙げてみますと…

・セクハラ=セクシャル・ハラスメント

・アルハラ=アルコール・ハラスメント

・パワハラ=パワー・ハラスメント

・モラハラ=モラル・ハラスメント

・マタハラ=マタニティ・ハラスメント

と、こんなところでしょうか。基本的には日本の企業や研究者が独自に名付けた和製英語であることからもわかるように、要はメディアが使いやすい、取り上げやすい言葉を作ってるんですよね。もちろん、実際に被害者と加害者がいて、社会的にも問題になっていますから、「色々あって訳わからん」と投げ出していい事案ではありません。むしろ、「昔からあった」にもかかわらず見過ごされてきた、あるいは問題視されてこなかった悪しき「慣習」に依る部分が大きいからこそ、ようやく「これはおかしいことなんだ」と、間違っていることとして認識されるようになったことは重要だと思います。

さて、そんななかで新たに名を授けられ、ハラスメントファミリーの一員となったのが「就活」であり、その名も「オワハラ」です。「オワハラ」とは、内定を出した企業が就活生に対して「就活を終わらせろ」と迫る行為のこと。もはや「オワ」が日本語になってしまった辺りに限界を感じずにはいられませんね。

これは少子化が進んだ結果、企業側が何とかして数少ない内定者を囲い込もうとして行っていることのようにも思えますが、実際には昔から内定者を研修旅行とか懇親会と称してまとめて連れ出し、他の企業の面接予定を半ば強制的にキャンセルさせるなんてこともザラにあったんですよね。ただ、当時はそういう行為も特に問題視はされていませんでした。無理やり旅行に連れ出すなんて、今よりずいぶんと強引な気もしますが、企業も就活生も「法的問題とかよくわからないけど、とりあえずそういうものなんだ」という社会全体の空気=思考停止が起こっていたからこそ成立していたと言えるでしょう。

学生の側としては、内定をキープしたまま就活を続けるという行為はわりと普通のことですから、要は企業の側に余裕がなくなってきているということなんでしょうね。これから一緒に働くことになる(かもしれない)人間に対して威圧的に迫るという時点で、よほど深刻な人手不足に陥っているか、あるいは単に人事の器の小ささが見えてしまっている気もしますが、これには就活の時期がズレたことも影響しているようです。そもそも日本の大学生→就活生→社会人の流れがあまりにもガラパゴスなシステムですから、修正するなら抜本的に変えなくてはいけないはずなんですけど、それを中途半端に手を入れてしまったことによる弊害が、この極端なオワハラとして顕在化してきた状況の原因のひとつと言っても間違いではないかもしれません。もちろん、そもそもそんなことを迫るな、という話ですし、別に行きたくない企業を受けている冷やかしのような行動が当然のようになっていることも異常です。まぁ学生にとっては自分が社会人として生きていく場所を決めるわけですから、トコトン就活するのも良いと思いますが、オワハラという言葉を笠に着るのはやめておいたほうが懸命だと思います。